今回は秋田県大仙市の「人口問題」という、未来に関わる大切なテーマについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
「人口減少」という言葉、ニュースでよく耳にしますよね。でも、それが私たちの暮らしにどう関わっているのか、具体的にイメージするのは難しいかもしれません。
今回は、統計データや市の計画を紐解きながら、大仙市が直面している課題を深掘りし、未来を少しでも明るくするためのヒントを探るブログ記事をお届けします。少し長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。
大仙市の未来の姿?データが示す、ちょっとドキッとする現実
まず、大仙市の人口が今どうなっているのか、データを見てみましょう。
昭和30年(1955年)に約12万人だった大仙市の人口は、一貫して減り続け、令和2年(2020年)には約7万8千人になりました 。特に2000年代に入ってからは、毎年1,000人から2,000人規模で人口が減っており、そのペースは加速しています 。
そして、未来の予測はさらに深刻です。このままのペースが続くと、2045年には人口が約4万8千人にまで減少すると推計されています 。市はさまざまな対策を講じることで、2065年に4万2千人を維持するという目標を掲げていますが、それでも今の半分近くになってしまう可能性があるのです 。
人口が減るだけでなく、その年齢構成も大きく変わっていきます。生まれる子どもの数(年少人口)が減り続け、社会を支える働き手世代(生産年齢人口)も減少。一方で、65歳以上の高齢者の割合は増え続け、2045年には生産年齢人口の割合を上回ってしまうと予測されています 。
これは、地域経済の担い手や税収が減り、社会保障の負担が重くなることを意味します。私たちの暮らしに直結する、とても大きな問題なのです。
なぜ人口は減り続けるの?2つの大きな「穴」
では、なぜ大仙市の人口は減り続けてしまうのでしょうか。原因は大きく分けて2つあります。
1. 若者が街を離れてしまう「社会減」
一つ目の原因は、市外へ出ていく人(転出)が、入ってくる人(転入)を上回る「社会減」です 。特に深刻なのが、高校や大学を卒業する10代後半から20代の若者たちの流出です 。
なぜ若者たちは大仙市を離れてしまうのでしょうか。 多くの調査で指摘されているのが、**「働きたい仕事がない」**という雇用のミスマッチです 。若者、特に女性が希望する職種や、多様なキャリアを描ける仕事の選択肢が、首都圏などと比べて少ないのが現状です 。賃金水準の差も、若者が地元を離れる大きな理由の一つと考えられます 。
大仙市もこの問題を重要視し、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で「新規雇用創出」を目標に掲げています。しかし、その進捗は思わしくなく、令和7年の目標600人に対し、令和5年時点での実績は282人と、目標達成が難しい状況です 。
2. 生まれる子どもが減っていく「自然減」
二つ目の原因は、亡くなる人の数が生まれる人の数を上回る「自然減」です 。
大仙市の出生数は年々減少傾向にあり、令和5年には308人と、過去最少を更新しました 。一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均(合計特殊出生率)も、全国や秋田県と比べても減少幅が大きくなっています 。
もちろん、市も手をこまねいているわけではありません。保育料や医療費の助成、相談窓口の設置など、様々な子育て支援策を打ち出しています 。しかし、市民アンケートの結果を見ると、「子育て支援の満足度」は令和7年の目標70%に対し、令和5年時点で49.1%と、大きな隔たりがあります 。
これは、経済的な支援だけでなく、「地域に知り合いがいない」「気軽に相談できる場所がない」といった、子育て中の親が抱える孤立感や不安に、支援が必ずしも届いていない可能性を示唆しています 。
負のスパイラルを断ち切るために。未来への3つの処方箋
「若者の流出」と「出生数の減少」。この2つの問題は、実は深くつながっています。
若者、特に子どもを産む中心世代となる若い女性が市外へ出て行ってしまうと、市内で生まれる子どもの数は必然的に減ってしまいます。そして、子どもが減ると、学校の統廃合や小児科の撤退などが進み、子育て環境がさらに厳しくなり、また若者世代が流出する…という「負のスパイラル」に陥ってしまうのです 。
この悪循環を断ち切るには、どうすればいいのでしょうか。市の計画やデータをヒントに、3つの処方箋を考えてみました。
処方箋1:「働きたい」と「働きやすい」を両立する『しごと』づくり
若者の流出を食い止めるには、何よりもまず魅力的な雇用が不可欠です。
- 地域の強みを活かす: 大仙市には、全国に誇る「花火」や豊かな「農業」という強みがあります 。これらの産業にITやデザインといった新しい視点を掛け合わせ、高付加価値な商品やサービスを生み出す「農商工連携」をさらに推し進めることが重要です 。
- 新しい働き方に対応する: コロナ禍を経て、テレワークやリモートワークが当たり前になりました。この流れをチャンスと捉え、サテライトオフィスを積極的に誘致したり、市内で起業する人を応援したりすることで、「転職なき移住」を呼び込むことができます 。市には各種助成制度もあるので、ぜひ活用したいところです 。
処方箋2:孤育てをなくす、「みんなで」の『子育て』支援
子育て支援の満足度を高めるには、経済的な支援の拡充はもちろん、親たちの心に寄り添う「質」の向上が鍵となります。
- 「つながり」をつくる支援: 親子で気軽に集える場所や、子育ての悩みを共有できるコミュニティづくりをサポートすることが大切です。移住してきたばかりの親たちが地域に溶け込めるような、きめ細やかなフォローも求められます 。
- 多様なニーズに応える: 「こども誰でも通園制度」の試行的事業のように、親の就労状況に関わらず子どもを預けられる仕組みや、病児保育など、多様化するニーズに柔軟に応えていく必要があります 。
処方箋3:誰もが暮らしやすい、持続可能な『まち』づくり
人口が減少しても、市民が安心して豊かに暮らし続けられるまちづくりも欠かせません。
- 賢くまとまる「ネットワーク型コンパクトシティ」: 市の計画にもあるように、医療・福祉・商業といった生活に必要な機能を各地域の拠点に集約し、それらを公共交通で結ぶ「ネットワーク型コンパクトシティ」の考え方を進めることが、持続可能なまちづくりにつながります。
- 市民が主役の地域づくり: 行政任せにするのではなく、住民自身が地域の担い手となり、支え合う仕組みをつくることが、コミュニティの活力を維持していく上で不可欠です。
おわりに
大仙市が直面する人口問題は、決して簡単な課題ではありません。しかし、データは未来を予測するためのものであり、未来を決定づけるものではありません。
この記事で見てきたように、大仙市には素晴らしい地域資源と、課題解決に取り組むエネルギーがあります。市の戦略の進捗が思わしくない部分もありますが、それは「挑戦している証」でもあります。
大切なのは、この現実から目をそらさず、行政、企業、そして私たち市民一人ひとりが「自分ごと」として捉え、未来のために何ができるかを考え、行動していくことではないでしょうか。
この記事が、皆さんと一緒に大仙市の未来を考える、小さなきっかけになれば幸いです。