大館市の人口は今後どうなる?統計データから課題を深掘り、未来を考える

秋田県の人口

「自分の住む街の人口が、25年後には今の半分近くになるかもしれない」

もしそう言われたら、あなたはどう感じますか?これは遠い未来の話ではなく、秋田県大館市が直面している、すぐそこの現実かもしれません。

こんにちは。今回は、私たちの故郷、大館市の「人口問題」について、少し真面目に、でも希望を持って考えてみたいと思います。最新の統計データや市の計画を紐解きながら、なぜ人口が減り続けているのか、そして未来のために何ができるのかを、皆さんと一緒に探っていきます。

 

データが語る大館市の「今」。人口減少の深刻な現実

 

まず、大館市が置かれている状況を、客観的なデータで見てみましょう。

  • 止まらない人口減少:2020年の国勢調査で約6.9万人だった大館市の人口は、このままのペースでいくと、2050年には約4万人を割り込むと推計されています。これは、わずか30年で市の人口が4割以上も減少する計算です。
  • 全国トップクラスの高齢化:令和6年(2024年)には、65歳以上の市民が全人口に占める割合を示す「高齢化率」が40%を突破しました。これは全国平均(約29%)を大幅に上回る水準で、4人いれば1.6人が高齢者という、超高齢社会の最前線にいることを意味します。
  • 人口減少の2大要因:人口の増減は、生まれる人と亡くなる人の差である「自然増減」と、引っ越してくる人と出ていく人の差である「社会増減」で決まります。大館市では、出生数の減少による「自然減」と、転出者が転入者を上回る「社会減」が同時に進行しており、これが人口減少を加速させているのです。

 

なぜ若者は大館を離れるのか?最大の課題「社会減」の深層

 

人口減少の中でも特に深刻なのが、若者の市外流出です。

大館市が公表している「人口ビジョン」でも、「15歳から24歳」の若者層が、進学や就職を機に市外へ転出し、そのまま戻ってこないことが、人口減少の最大の要因であると分析されています。

では、なぜ若者たちは大館を離れてしまうのでしょうか。その大きな理由の一つが**「仕事」**にあると考えられます。

秋田県が実施した「若年者の県内定着・回帰等に関する意識調査」によると、若者が魅力的だと感じる業種は、男女ともに「医療業」「公務」、男性では「情報通信業」、女性では「学校教育」が上位を占めています。

一方で、大館市の産業は、製造業、建設業、医療・福祉、そして商業が中心です。これらは地域経済を支える重要な産業ですが、若者が求める多様な職種の選択肢、特に「情報通信業」のような分野が豊富にあるとは言えないのが現状です。

この**「若者が働きたい仕事」と「地域にある仕事」のミスマッチ**が、若者を市外へと向かわせる大きな力になっているのではないでしょうか。

 

大館市の挑戦と可能性。未来へのヒントはここにある

 

厳しい現実に、市も手をこまねいているわけではありません。市は「2060年に4万人規模の人口を維持する」という野心的な目標を掲げ、人口減少に歯止めをかけるための挑戦を始めています。

そして、私たちには希望となる確かな「強み」があります。

  • 世界が注目するブランド「秋田犬(AKITA)」 忠犬ハチ公のふるさとである大館市にとって、秋田犬は唯一無二の宝です。近年では、地域連携DMO「秋田犬ツーリズム」が設立され、秋田犬を核としたインバウンド誘客や戦略的な情報発信が行われています。これは単なる観光にとどまらず、関連グッズ開発やペット産業など、新たなビジネスを生み出す大きな可能性を秘めています。
  • 豊かな食文化「きりたんぽ」と「比内地鶏」 大館市が誇る郷土料理きりたんぽと、日本三大美味鶏の一つである比内地鶏。これらは既に高い知名度を持っていますが、体験型観光コンテンツとしての「きりたんぽ作り体験」や、食をテーマにした起業支援、ブランド力のさらなる強化など、まだまだ磨き上げることで地域を潤す力を持っています。
  • 脈々と受け継がれる「ものづくり」の基盤 市内には、東光鉄工株式会社や株式会社北鹿といった有力な製造業が根付いています。これらの企業が持つ技術力や生産基盤は、地域の安定した雇用の受け皿であると同時に、時代のニーズに合わせたDX(デジタルトランスフォーメーション)などを進めることで、若者にとっても魅力的な職場へと進化できるポテンシャルがあります。

 

【未来への処方箋】若者が選び、住み続けたい街になるための3つの提案

 

これらの現状と可能性を踏まえ、大館市が若者に選ばれる街になるための具体的な処方箋を3つの視点から提案します。

 

提案1【しごと】:「好き」を仕事に。地域資源で新しい雇用を創る

 

若者が地元に残る、あるいは戻ってくるためには、魅力的な仕事が不可欠です。

  • 「秋田犬」を核とした体験型ビジネスの創出:「秋田犬ツーリズム」と連携し、観光客向けのサービスだけでなく、トリマーやブリーダー、ペット関連商品の開発・ECサイト運営など、若者の「好き」を仕事にできる多様なスモールビジネスを市が積極的に支援する。
  • 「食」の起業家を育てる:「きりたんぽ」や「比内地鶏」を使った新商品の開発コンテストや、キッチンカーでの独立開業支援など、食の分野でチャレンジしたい若者を応援する仕組みを強化する。
  • 地元企業の魅力を再発見・発信する:市内の製造業などが取り組むDXや働き方改革を積極的に取材し、市の公式サイトやSNSで「こんなカッコいい会社が大館にあるんだ!」と若者に伝わる形で発信する。

 

提案2【ひと・子育て】:帰ってきたい、育てたいと思える温かい支援

 

Uターンを考える若者や、子育て世代の不安に寄り添う支援が求められます。

  • Uターン(Aターン)者のためのコミュニティ支援:市は移住者に対し、世帯に100万円、単身者に60万円(18歳未満の子ども一人につき100万円加算)という手厚い支援金制度を設けています。これに加え、Uターン者同士や地元の若者が気軽につながれるオンラインコミュニティや交流イベントを市が主催・支援することが重要です。都会でのキャリアを活かせる仕事のマッチングや、同世代の仲間がいるという安心感が、Uターンを後押しします。
  • 孤立しない子育て環境づくり:子育て世代が悩みを共有し、気軽に相談できるオンラインプラットフォームの整備や、親子で参加できるイベントを増やす。経済的な支援だけでなく、「一人じゃない」と感じられる心のサポートが、出生率の向上にも繋がります。

 

提案3【まち・暮らし】:未来を見据えた、持続可能な街へ

 

人口が減少する中でも、誰もが安心して暮らし続けられる街の姿を考える必要があります。

  • 地域中核都市としての機能維持:県北部の中心都市として、将来にわたって高度な医療や商業サービスを維持するため、市の中心拠点に必要な機能を集約していく「コンパクトシティ」の視点が重要です。
  • デジタル技術で暮らしを支える:高齢者の見守りサービスや、買い物・通院が困難な人向けのAI活用型オンデマンド交通など、デジタル技術を積極的に活用し、人口が減っても生活の質が落ちない仕組みを構築する。

 

おわりに

 

大館市が直面する人口減少は、確かに厳しい現実です。しかし、データは未来を決定づけるものではなく、未来をより良く変えていくための「羅針盤」です。

私たちには、世界に誇る秋田犬がいて、心も体も温まるきりたんぽがあります。そして、この街を愛し、未来を憂う市民がいます。

行政の取り組みはもちろん重要ですが、それだけでは街の未来は変わりません。私たち一人ひとりが、大館市の魅力と課題に関心を持ち、「自分たちの街をどうしていきたいか」を考え、語り合うこと。それが、若者が希望を持てる、持続可能な大館市を創るための、最も確かな第一歩になるはずです。

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