五城目町への移住——「何かを試したい人」が集まる町
秋田県南秋田郡五城目町は、人口減少が続く小さな町でありながら、移住先として全国から継続的に注目を集めています。廃校を再活用した起業支援拠点、500年以上の歴史を持つとされる朝市、秋田市中心部まで車で40〜50分というアクセス条件——これらが重なり、農山村の静けさと都市的なネットワークの両方を求める移住者に選ばれ続けています。
ただし「移住しやすい町」と「誰にでも向いている町」は別の話です。この記事では、五城目町の移住支援制度の内容、実際に移住するまでの手順、暮らしの現実的な条件を順を追って整理しています。制度の数値・金額については町の担当窓口への確認が不可欠であることを先にお伝えしておきます。
五城目町の基本情報とアクセス
五城目町は秋田市の北東、八郎潟の東側に位置しています。最寄り駅はJR奥羽本線の八郎潟駅または追分駅で、いずれもバス接続またはマイカーが前提となります。秋田市中心部へは国道285号線経由で40〜50分ほど。秋田自動車道の五城目八郎潟ICも近く、高速を使えば大館・能代方面にもアクセスできます。
町内にはスーパー・道の駅・診療所など基本的な生活施設がそろっており、「田舎すぎて何もない」という状況ではありません。ただし特定診療科の専門医・大型書店・映画館などは秋田市まで出る必要があります。秋田市で働きながら五城目に暮らす「二地域的な生活」を選ぶ移住者がいるのも、このアクセス条件があってこそです。
町の顔ともいえるのが、毎月2・5・7のつく日に開かれる「五城目朝市」です。地元農家が野菜・山菜・漬物などを持ち寄るこの市は、五城目町公式サイトや各種観光資料において「500年以上の歴史を持つ」と紹介されています。移住者にとっては地域の人と顔をつなぐ最初の接点として機能しており、朝市に通うことが地域に溶け込む入口になるという声は移住経験者の間で繰り返し聞かれます。

移住するまでの手順——相談から転入届まで
「移住したい」という気持ちと「実際に移住する」の間には、いくつかの具体的なステップがあります。五城目町への移住は、おおむね以下の流れで進めるのが現実的です。
ステップ1:情報収集・オンライン相談
まずは秋田県の移住ポータルサイト「秋田暮らし はじめの一歩」の五城目町ページで、現行の支援制度一覧を確認します。町公式サイトでもオンライン相談会の案内が随時掲載されるため、定期的にチェックするのが効率的です。この段階では「どんな支援があるか」の把握と、自分の移住目的(就農・起業・子育て等)に合う制度の絞り込みが目的になります。
ステップ2:町役場の移住担当窓口へ相談
五城目町役場には移住・定住を担当する窓口があります。オンライン情報だけでは把握しにくい「現在の空き家バンク登録状況」「補助金の申請受付状況」「今年度の予算残枠」などは、直接問い合わせることで確認できます。制度の内容・金額・対象要件はいずれも年度ごとに変更される場合があるため、記事内の情報はあくまで参考として、最新の内容は必ず窓口で確認してください。
ステップ3:現地訪問・お試し居住
可能であれば、移住を決める前に少なくとも一度は現地を訪れることを強くおすすめします。特に冬季(12〜3月)の訪問が重要です。秋田県内でも積雪が多いエリアに属する五城目町の冬は、屋根の雪下ろし・車の除雪・路面凍結が日常であり、都市部からの移住者が最も苦労する季節です。「暮らせるかどうか」は数値より体感の方がはるかに正確に教えてくれます。
BABAME BASEの見学やコワーキングスペースの利用、朝市への参加なども、この段階で経験しておくと移住後のイメージが具体化します。
ステップ4:住まいの確保(空き家バンク・賃貸)
五城目町では空き家バンク制度を運営しており、移住希望者と空き家所有者のマッチングを行っています。登録物件数・条件は時期によって変動するため、役場担当窓口または秋田県の移住ポータル経由で最新の物件情報を確認します。賃貸物件については、一般的な秋田県内の農村部の相場として月額数万円台が目安とされますが、物件の築年数・設備・立地によって大きく異なります。実際の家賃水準は物件ごとに確認してください。
ステップ5:各種手続き(転入届・補助金申請等)
住まいが決まったら、転入日から14日以内に五城目町役場で転入届を提出します。あわせて、対象となる補助金・支援制度の申請手続きを行います。補助金によっては転入前の事前申請が必要なものや、申請期限が設定されているものもあるため、ステップ2の段階で申請スケジュールを確認しておくことが重要です。
五城目町の移住支援制度【2026年時点の概要】
以下は五城目町が設けている主な支援制度の概要です。補助金額・上限・補助率・対象要件はいずれも年度ごとに変更される場合があります。具体的な数値については、必ず五城目町役場の担当窓口または「秋田暮らし はじめの一歩」で2026年度の最新情報を確認してください。
新婚世帯向け:新婚さん生活応援事業
結婚を機に五城目町内に住居を構えた新婚世帯に対して、住宅取得費または賃貸費用の一部を補助する制度です。住宅購入・賃貸いずれも対象とされていますが、補助金額・上限・所得要件等の詳細は年度ごとに更新されます。結婚と移住を同時に検討している方は、役場窓口で現行の条件を確認した上で申請の可否を判断してください。
起業・就業支援:BABAME BASE(五城目町地域活性化支援センター)
五城目町の移住促進において最も特徴的なのが、廃校を活用した起業支援の仕組みです。2013年3月に閉校した馬場目小学校の校舎(馬場目字蓬内台117番地1)を改修した「五城目町地域活性化支援センター(通称:BABAME BASE)」は、同年10月に開設されたと五城目町の公式資料等で紹介されています。
施設内には事業支援室(個室)とシェアオフィス、コワーキングスペース「しごと場 五城目」が設けられています。個室については7室・16〜51㎡という規模が紹介されていますが、現在の空き状況・賃料・入居要件は直接BABAME BASEまたは町役場へ問い合わせることで確認できます。賃料は一般的なオフィス賃貸と比べて低廉な水準と紹介されており、起業初期のコスト負担を抑える設計になっています。
また「起業者事業拡充支援事業」として、BABAME BASE入居者や町内起業者の設備投資・事業展開を補助する制度もあります。補助率・上限額は年度ごとに変わるため、町窓口への確認が必須です。
子育て・出産支援
子育て世帯の定住を意識した支援として、誕生祝金の支給・ブックスタート読み聞かせ事業・チャイルドシート購入費補助・小学校入学記念品交付・インフルエンザ任意予防接種費補助などが設けられています。特定不妊治療・一般不妊治療の費用給付制度もあり、子どもを持ちたいと考えるカップルへの対応もされています。各制度の支給額・対象年齢・申請条件は役場で確認してください。
地域おこし協力隊
五城目町は地域おこし協力隊の受け入れを継続しており、任期は最長3年です。活動終了後にそのまま起業・定住する元隊員が複数いることが、五城目の協力隊制度の特徴として紹介されています。BABAME BASEとの連携によって「協力隊→起業→定住」という流れが機能しているケースもあります。2026年度の募集状況と募集分野は、町公式サイトで随時公開されています。
BABAME BASEが生み出す移住者コミュニティ
五城目町の移住が秋田県内の他の町と性格を異にしている点は、移住者同士のネットワークがある程度機能していることです。BABAME BASEにはITエンジニア・デザイナー・農業生産者・飲食業者・伝統工芸職人など、異なる業種の事業者が同じ建物に集まっており、施設内での接点から自然にコラボレーションが生まれやすい環境が形成されています。
こうした土壌があるため、五城目への移住者は「のんびり暮らしたい」だけでなく「何か面白いことをやりたい」という動機を持つ層が比較的多いと言われています。秋田市内に勤務しながら週末を五城目で過ごす二地域居住者の存在も、移住の入口として五城目が使いやすい理由のひとつです。
なお、「シェアビレッジ町村」という古民家を年会費制の「村」として運営する取り組みが五城目発の事例として紹介されることがありますが、現在の活動状況・詳細については公式情報を直接確認してください。
暮らしの現実——移住前に知っておくべきこと
車は必須、冬は4WD前提
鉄道駅から離れた地区も多く、日常的な移動はマイカーが基本です。免許を持たない単身者が暮らすには、町中心部の徒歩圏内に住む必要があります。冬季の積雪・路面凍結を考えると、4WD車または雪道運転に慣れていることが事実上の条件になります。維持費・燃料費・タイヤ交換費用など、車に関わる年間コストは移住前に試算しておくことをおすすめします。
冬の生活負担
五城目町の冬は秋田県内でも積雪が多いエリアに属します。屋根の雪下ろし・除雪・暖房費の増加は、都市部からの移住者が最初の冬に直面する現実です。古民家や昭和以前の建築では断熱性能が低いため、暖房費が想定を超えることがあります。賃貸契約前に断熱・暖房設備の状態を確認することが重要です。
人口減少は進行中
五城目町の人口は長期にわたって減少傾向が続いています。移住促進の取り組みがその速度を完全に相殺するには至っておらず、商店数の減少・特定サービスの不在という現実もあります。「便利さ」を最優先する移住者には向かない選択かもしれません。一方で、移住者が増えることで地域に変化が生まれていることもまた事実であり、その変化の当事者になりたいかどうかが、五城目を選ぶかどうかの判断軸になります。
よくある質問
補助金の具体的な金額を教えてください
新婚世帯向け補助・起業拡充支援補助など各制度の金額・上限・補助率は、年度ごとに変更される場合があります。この記事執筆時点(2026年)では、町公式情報から金額を確定的に示せる状態にないため、具体的な数値は五城目町役場の担当窓口または「秋田暮らし はじめの一歩(a-iju.jp)」の五城目町ページで直接確認してください。補助金によっては申請期限・予算上限があり、年度途中で受付終了になるケースもあります。早めの問い合わせが有効です。
BABAME BASEは移住前でも見学・利用できますか?
シェアオフィス・コワーキングスペース部分は必ずしも五城目町在住者に限定されているわけではなく、まず見学・問い合わせから始めるのが現実的です。「お試し移住」として短期滞在しながらBABAME BASEを利用し、その後に本格移住を決断するというルートをとる人もいます。個室の事業支援室については、地域において新たな事業を創出することが入居の主な要件とされているため、起業計画の有無が判断材料になります。詳細は五城目町役場またはBABAME BASE(五城目町地域活性化支援センター)へ直接問い合わせてください。
移住後に農業をやりたい場合、農地取得はできますか?
農地取得には農業委員会の許可が必要で、原則として農業に常時従事することが条件です。移住直後にいきなり農地を購入するより、まず五城目町農業委員会へ相談し、研修農場や農地マッチング制度を活用して経験を積むのが現実的な順序です。五城目町周辺は木苺(ラズベリー)の産地として知られており、町内に木苺栽培を軸にした農家ネットワークがあるとされています。就農に関心がある場合は、このネットワークとの接点を早い段階でつくることが、農地確保・技術習得への近道になる可能性があります。農地の具体的な空き状況・遊休農地の情報については、五城目町役場または農業委員会への直接相談が最も確実です。
子連れ移住の場合、学校・保育環境はどうですか?
町内には保育所・認定こども園・小学校・中学校が設置されており、義務教育段階の教育環境は確保されています。高校は町内にないため、高校進学後は秋田市や周辺市町への通学が必要になります。秋田県全体で高校の統廃合が進んでいる点も念頭に置いておく必要があります(詳細は秋田県の高校統合【2026年】地区別まとめを参照)。経済的なサポートとしては、誕生祝金・チャイルドシート補助・不妊治療費給付など複数の制度が設けられています。
まとめ
五城目町への移住は、「田舎でのんびり暮らしたい」という層よりも、「何かを起こしたい・試したい」という動機を持つ人に向いている選択肢です。BABAME BASEという起業支援インフラ、地域コミュニティと移住者をつなぐ朝市、秋田市へのアクセス性——これら三つが重なる町は、秋田県内でも少ない。
一方で、冬の厳しさ・車必須の生活・人口減少という現実は変わりません。支援制度の金額・条件は年度ごとに変わり、この記事だけで判断するには限界があります。移住を具体的に検討する段階では、五城目町役場の担当窓口への相談を最初のステップにしてください。そして可能であれば、冬の五城目を一度体感してから決断することをおすすめします。
