2026年の五城目朝市——520年の歴史が今、岐路に立っている
秋田県南秋田郡五城目町。八郎湖の南東側に広がるこの小さな町に、毎月十数回、下タ町通りに露店が並ぶ日がやってきます。下一桁が2・5・7・0の日に開かれる「五城目朝市」は、520年の歴史を持つ秋田県内最古級の定期市です。地元産の野菜、山菜、漬物、八郎潟産の魚——そういった品々が軽トラの荷台や折りたたみテーブルに並ぶ光景は、今も変わらず続いています。
ただ、「変わらず続いている」という言葉の裏には、静かな危機があります。出店者の高齢化と減少、買い物客の減少、担い手不足——朝市を長年支えてきたお母さんたちの多くが70代・80代を迎え、「来年も出られるかわからない」という声が珍しくなくなってきました。2026年現在、五城目町全体の高齢化と朝市の存続問題は、切り離して考えられないほど深く結びついています。
この記事では、人口統計のデータをもとに町の現状を整理したうえで、「朝ぷら」に代表される再生の動きと、それでも残る根本的な課題について掘り下げます。
五城目町の高齢化率——数字が示す現実
五城目町の人口は長期的な減少傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所のデータをもとにした推計によれば、2040年時点で5,956人、2060年時点で4,387人の人口を維持することが五城目町の長期目標として掲げられています(第2期五城目町まち・ひと・しごと創生総合戦略、令和7年1月改定)。ピーク時には約16,000人近い人口を誇っていた町が、現在9,000人台前半まで減少しています。
高齢化の進行も著しく、老年人口(65歳以上)の割合は、1980年代には12.5%程度だったとされるところから、現在は40%台に迫る水準まで上昇したとみられます(総務省・国勢調査データをもとにGD Freak!が集計した二次データによる)。ただし、この高齢化率については一次統計との突き合わせが完全にできているわけではなく、目安として参照するにとどめてください。生産年齢人口(15〜64歳)が細り、高齢者が地域の担い手として重きを置かれる構図——それが朝市にもそのまま反映されています。
朝市の出店者も同じ構造を抱えています。かつては平日の朝市に100軒を超える出店が並んでいたとも言われますが、近年は大幅に縮小しています(具体的な出店数の推移に関する公式記録は現時点では確認できていないため、関係者の証言に基づく情報として読んでいただければと思います)。自ら山菜や野菜を収穫して並べていた農家の女性たちが農作業そのものを続けることが難しくなり、後継者のいない農家が廃業するたびに、朝市から品物が一つずつ消えていく。この積み重ねが、平日の朝市の縮小につながっています。

「朝ぷら」の誕生——若い世代が朝市に風を吹き込んだ
この状況に動いたのが、地元住民と移住者の連携でした。2015年、「五城目朝市わくわく盛り上げ隊」が結成されます。五城目で生まれ育ち朝市の変遷を見てきた地元住民と、東京から地域おこし協力隊として移住してきた若者たちが出会い、町の未来を語るワークショップを経て生まれた動きでした(秋田県・あきた女性の活躍応援ネットより)。
翌2016年には、「ごじょうめ朝市plus+(通称:朝ぷら)」がスタートします。定期朝市の開催日が日曜と重なる日に開かれるイベント型の市で、ハンドメイド雑貨、カフェメニュー、地域食材を使ったスイーツなど、従来の朝市にはなかった出店者が加わりました。老若男女が訪れ、賑わいが一段と増す日として定着し、約3,000人規模の来場者を集めるほどになりました(a.woman「五城目朝市がお祭り騒ぎでおもしろ過ぎる!」より)。
ベビーカーを押しながら、犬を連れながら気軽に立ち寄れる青空市という空気が、若い世代に届きました。同時に、町外からの観光客や移住希望者が五城目を訪れるきっかけにもなっています。
一方で、現地を知る人たちは「朝ぷらだけが五城目朝市ではない」と口を揃えます。昔ながらの出店者だけでも、若い世代の出店者だけでも朝市は成り立たない。520年続いてきた歴史の厚みは、そのバランスの上にある——というのが、朝市に関わる人たちの共通認識です(秋田県秋田地域振興局・「あきたどまんなか宣伝局」noteより)。
移住者と地域おこし協力隊が果たす役割
五城目町の朝市再生において、地域おこし協力隊の存在は欠かせません。「ごじょうめ朝市大学」という、地元住民と移住者が一緒に学び行動する場も立ち上がり、「空き家活用」「デジタルファブリケーション(デジファブ)」など、従来の農村のイメージとは異なる実験的な取り組みが町内で次々と生まれています(五城目移住宣言ポータルサイトより)。
移住者が増えれば、それだけ若手出店者の候補も広がります。五城目町は近年、移住促進にも力を入れており、豊かな自然環境と秋田市へのアクセスのよさを売りにしています。朝市を「入口」として五城目に興味を持ち、そのまま移住に至るケースも出てきており、朝市が観光資源にとどまらず「移住のハブ」として機能しつつある——というのが、ここ数年の変化です。
また、宿泊業と朝市を組み合わせる動きも出てきています。「朝市の日に合わせて滞在する」というスタイルの旅行需要は、SNSの普及とともに少しずつ認知されており、町内外の関係者が連携を模索しています。ただし、具体的な施設情報については公開情報から確認できたものに限り紹介するよう努めており、断定的な記述は避けています。
高齢出店者が引退した後に何を残すか——本当の課題
朝ぷらが注目を集め、移住者が増えても、根本的な問いは残ります。高齢の出店者たちが朝市から姿を消したとき、五城目朝市は何を失うのか——ということです。
朝市に何十年も通い続けているお客さんにとって、特定の出店者との会話そのものが目的だったりします。「あのおばあちゃんの山菜漬け」「この季節だけ出てくる川魚の塩焼き」。そういう「人と品物のセット」で積み上げられてきた記憶が、高齢化によって少しずつ失われていきます。若い出店者が新鮮なコーヒーやクラフトビールを並べることと、どちらが大切かという話ではなく、その両方が同時に存在することに、朝市としての価値があります。
出店者が語る知恵や技術——山菜の採り方、味噌や漬物の仕込み方、季節の食材の活かし方——は、農山村の暮らしそのものです。それを若い出店者や移住者に伝え切れるかどうかが、今後10年の五城目朝市を左右する、静かで切実な問いかもしれません。
五城目町が直面している課題は、実は朝市だけの話ではありません。秋田県の消滅可能性自治体24市町村の実態と現在地でも報告されているように、秋田県では多くの自治体が消滅可能性自治体に名を連ねており、五城目町もその例外ではありません。人口が減り、高齢化が進む中で「地域のシンボル」を次世代に引き継ぐことの難しさは、全県共通のテーマです。
よくある質問
五城目朝市はいつ開かれていますか?
五城目朝市は毎月、日付の下一桁が2・5・7・0の日に開催されます(2日、5日、7日、10日、12日、15日……30日)。朝8時ごろから昼前まで、下タ町通りに出店が並びます。入場に予約は不要で、誰でも自由に見て回れます。「朝ぷら(ごじょうめ朝市plus+)」は定期開催日が日曜と重なる日に開かれ、賑わいが一段増します。秋田市からは車で約30〜40分、駐車場も整備されています。
五城目朝市に出店するにはどうすればいいですか?
出店希望の場合は、まず五城目町役場の観光商工担当窓口か、朝市関連の問い合わせ先に直接確認するのが確実です。朝市は古くから自由な露店文化を持っており、地元農家が野菜や加工品を持ち寄るスタイルが基本ですが、近年は移住者や若手起業家の出店も増えています。朝ぷらへの出店は「五城目朝市わくわく盛り上げ隊」が窓口になっているケースがあります。出店料や申込み方法の詳細は町公式サイト(town.gojome.akita.jp)でご確認ください。
五城目町への移住支援制度はありますか?
五城目町では移住・定住を促進するための各種支援があります。地域おこし協力隊の受け入れも積極的で、協力隊として移住した後に起業・就農して定住するケースも出ています。空き家バンク制度も整備されており、町内の空き物件を活用した移住が可能です。補助金額・要件は年度により変わることがあるため、五城目町役場または移住ポータルサイト「五城目移住宣言(gojome.net)」で最新情報をご確認ください。
朝市を訪れるのにおすすめの季節はいつですか?
季節ごとに並ぶ品物が変わるので、どの季節にも独自の魅力があります。山菜が豊富に出回る春(4〜5月)、採れたての野菜が並ぶ夏(7〜8月)、きのこや根菜が充実する秋(9〜11月)——それぞれに異なる顔があります。「賑やかな雰囲気を楽しみたい」なら春から秋の朝ぷら開催日、「昔ながらの朝市の空気を感じたい」なら平日の朝市がおすすめです。季節を変えて複数回訪れると、また違う五城目が見えてきます。
まとめ
五城目朝市は、高齢化という現実と向き合いながら、新旧の出店者・地元住民・移住者が絡み合う場として今も続いています。朝ぷらという若い風が吹き込んだことで、訪れる人の層は確かに広がりました。しかし520年続いてきた朝市の記憶を次世代に渡すためには、賑やかさだけでは届かないものがあります。平日の静かな朝市に立つお母さんたちから、誰が何を受け取るのか——その問いへの答えが、これからの五城目朝市の姿を決めていくでしょう。
朝市に足を運んでみたい方、出店や移住に関心がある方は、五城目町役場や「五城目移住宣言(gojome.net)」を通じて、まず問い合わせてみることをおすすめします。五城目町の人口動向や移住施策の全体像については、秋田県の人口問題と市町村ごとの課題もあわせてご覧ください。
