「湯沢市がいつか夕張市のようになるのではないか」――。そんな不安な声を、街のあちこちで耳にします。加速する人口減少、巨大な新庁舎への批判、そして空き家が目立つ商店街。
結論から言えば、現在、湯沢市がすぐに「財政破綻(財政再生団体への転落)」する可能性は極めて低いと言えます。しかし、数字を詳細に読み解くと、決して楽観視できない「構造的な限界」も見えてきます。
本記事では、最新の令和5年度決算データと2050年の将来推計をもとに、私たちの故郷・湯沢の真実の姿を上級編集者の視点で分析します。
湯沢市の財政状況:数字で見る「現在地」
まず、市民が最も懸念している「破綻の危険度」を示す指標を確認しましょう。国が定めた基準と比較すると、湯沢市の数値はすべて「健全」の範囲内に収まっています。
| 指標名 | 湯沢市実績(R5年度) | 早期健全化基準 | 財政再生基準(破綻) |
| 実質公債費比率(借金返済の重さ) | $11.9 \%$ | $25.0 \%$ | $35.0 \%$ |
| 将来負担比率(将来の負債の重さ) | $64.3 \%$ | $350.0 \%$ | - |
| 財政力指数(自前の収入の割合) | $0.32$ | - | - |
| 経常収支比率(家計のゆとり) | $96.2 \%$ | - | - |
(出典:湯沢市 令和$5$年度決算公表資料より作成)
なぜ「財政が厳しい」と感じるのか?
指標が健全である一方で、なぜ私たちは閉塞感を感じるのでしょうか。その理由は、「経常収支比率 96.2%」という数字に隠されています。
これは、市に入ってくる自由に使えるお金のうち、96.2%が人件費や扶助費(福祉)、借金の返済といった「削れない固定費」で消えてしまうことを意味します。つまり、新しい街づくりや魅力的な施策に投資できる余裕が、わずか4%弱しかないのです。
特に湯沢市は、2005年の1市2町1村(湯沢市、雄勝町、稲川町、皆瀬村)の合併により、県内でも有数の広大な面積を抱えることとなりました。人口が減っても、管理すべき道路、橋梁、公共施設の数は減りません。雪国ゆえの膨大な除雪費も重くのしかかります。この「インフラ維持コストと人口減少のアンバランス」こそが、市民が感じる不安の正体です。
未来予測:2050年、私たちの生活はどうなる?
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、湯沢市の人口は2050年には約19,500人まで減少すると予測されています。現在の半分以下の規模です。
このままの構造で進めば、以下のような事態が現実味を帯びてきます。
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インフラの淘汰: すべての市道を維持することが困難になり、居住エリアを絞り込む「コンパクトシティ化」が強制的に進む。
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行政サービスの受益者負担増: 下水道料金や公共施設利用料の大幅な値上げが避けられなくなる。
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コミュニティの消失: お祭りや伝統行事の担い手が不足し、「小野小町まつり」や「犬っこまつり」の維持が一段と厳しくなる。
希望の種:湯沢市が持つ「逆転の資産」
しかし、絶望する必要はありません。湯沢市には他の自治体が喉から手が出るほど欲しがる「独自の強み」があります。
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地熱エネルギーの聖地: 日本有数の地熱資源を背景に、木地山や秋ノ宮での地熱発電事業が進んでいます。これは単なる売電収入だけでなく、「環境先進都市」としての企業誘致の切り札になります。
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世界に誇る食文化: 「稲庭うどん」や「川連漆器」、そして400年以上の歴史を誇る酒蔵群。これらは関係人口(ファン)を増やす強力なコンテンツです。
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デジタルと住民の共創: 財政が厳しいからこそ、湯沢市はDX(デジタルトランスフォーメーション)に注力しています。スマートな行政運営でコストを削り、浮いた資金を子育て支援に回す好循環の模索が始まっています。
「消滅」を「再生」に変える、私たちの選択
湯沢市は、物理的な意味での「財政破綻」は回避できるでしょう。しかし、今のままの生活水準を漫然と維持できる保証はどこにもありません。
大切なのは、数字に一喜一憂することではなく、「何を維持し、何を諦めるか」という対話から逃げないことです。行政にすべてを委ねるのではなく、市民一人ひとりが「この街の誇りは何か」を再定義する。それこそが、2050年に湯沢という街を次世代に引き継ぐための、唯一にして最大の戦略となるはずです。
データ引用元
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湯沢市公式ホームページ:令和5年度決算 財政健全化判断比率
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国立社会保障・人口問題研究所:日本の地域別将来推計人口(2023年推計)
