ピーク時から半減へ――大館市の人口、いまどこまで減ったか
大館市の人口は、2026年時点で6万3,000人台で推移しています。住民基本台帳ベースでは2025年1月1日時点で65,492人(外国人含む)、同年5月末時点で64,752人という数字が公表されており(出典:大館市公式サイト・住民基本台帳人口)、近年は年間1,000〜1,500人ペースで減り続けています。
この数字を歴史的に見ると、変化の大きさが実感できます。大館市の人口がピークを迎えたのは1950年代から60年代にかけてのことで、鉱業・製材業が盛んだった時代の旧大館市域(現在の合併後の市域とは異なります)では10万人を超えていたとされています。なお、現在の合併後の市域でみると、2005年の旧比内町・田代町との合併直後が事実上の最大規模で、その後は一貫して減少が続いています。昭和末期まで8万〜9万人台を維持していましたが、バブル崩壊以降に加速した産業空洞化と若者の流出が重なり、2020年の国勢調査では69,237人を記録しました。これは5年前比で▲6.7%という減少率に相当します。

年齢構成の変化も深刻です。2025年1月1日時点の住民基本台帳データによれば、65歳以上の高齢者が総人口の40.6%を占め、約2.5人に1人が高齢者という状況です(出典:大館市公式サイト・住民基本台帳人口)。一方、出産・子育ての担い手となる20〜39歳の女性は5,068人で、総人口の7.3%にとどまります(全国平均は約10.3%)。また、生産年齢人口(15〜64歳)と高齢者(65歳以上)の比率から単純計算すると、高齢者1人を支える生産年齢人口は1人台前半にとどまるとみられ(住民基本台帳の年齢別人口データをもとに編集部試算)、全国平均と比べてもその差は大きくなっています。
推計データが示す2040年・2060年の姿
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2023年12月に公表した将来推計人口によれば、大館市の人口はおおむね以下の軌跡をたどる見込みです。
- 2030年:約63,008人
- 2040年:約48,849人
- 2050年:約39,700人
- 2060年:約31,374人
2040年の約4万9,000人という水準は、現在から約1万5,000人が消えることを意味します。さらに2060年の約3万1,374人という推計は、2020年比でおよそ55%の減少(残存人口は約45%)に相当します。「ほぼ半分以下」という表現でいえば正確ですが、「半分減る」という言い方と混同しないよう注意が必要です。2020年の人口を100とすれば、2060年には45程度まで縮小するイメージです。また同推計では、2050年時点の大館市の平均年齢が68.1歳前後に達するとされており、2020年の53.8歳から大幅な上昇が見込まれています(出典:GD Freak!「大館市の人口と世帯 人口推移」(社人研データ準拠))。
大館市が2024年4月に改訂した「大館市人口ビジョン」でも、社人研の令和5年12月推計に準拠した同様の数字を採用しており、市自身もこの厳しいシナリオを公式に認識しています(出典:大館市人口ビジョン(R6.4改訂)PDF)。
一方で、「前回推計より上振れしている」という点は注目に値します。2018年時点の旧推計と2023年推計の2045年値を比較すると、今回のほうが約1,605人(約3.8%)多くなっており、わずかながらプラスの動きも確認できます。推計はあくまで「現状トレンドが続いた場合」のシナリオであり、政策の積み重ねや社会変化によって実態が上振れする可能性もゼロではありません。
なぜ大館市はこれほど人が減り続けるのか
大館市の人口減少は、「自然減」と「社会減」という二つの力が同時に働いた結果です。
自然減とは、死亡者数が出生者数を上回る状態を指します。高齢化率が40%を超えている状況では、出生数が多少回復しても死亡数がそれをはるかに上回ります。年少人口(0〜14歳)の割合は低下が続いており、子どもを産み育てる世代の絶対数そのものが細っている点が根本的な問題です。
社会減は、進学・就職を機に市外へ転出する若者の多さによるものです。大館市には秋田県立大館鳳鳴高校や大館桂高校など県内でも知名度の高い高校がありますが、大学・専門学校への進学先は秋田市や仙台、東京方面が多く、そのまま地元に戻らないケースが目立ちます。地元出身者のあいだでは「高校まで大館で過ごしたが、就職先の選択肢が少なく秋田市か首都圏に出た」という経緯はよく聞かれる話で、若い世代の流出に歯止めがかかっていないのが実情です。
産業構造の面でも、かつての柱だった鉱業(小坂鉱山などとの連動)や製材業が縮小し、現在はリサイクル産業や医療・介護産業が主軸となっています。雇用の量が一定程度維持されている部分もありますが、若者が「ここで働き続けたい」と感じられるような高賃金・成長産業の厚みはまだ十分とはいえません。秋田県内の市町村別所得格差を見ても、大館市が県内で特に高水準というわけではなく、賃金面での不利が転出を後押しする一因になっていると考えられます。
人口減少を前提にした大館市の動き
厳しい推計を前に、大館市はいくつかの軸で施策を進めています。
移住・定住支援の充実
大館市は移住者向けの支援制度を整えており、条件を満たせば最大200万円規模の補助が受けられる制度も存在します(詳細は大館市への移住は最大200万円支援も?にまとめています)。秋田犬の里や大館曲げわっぱ、きりたんぽ発祥の地としての知名度を活かし、「城下町の暮らしやすさ」を前面に出した移住プロモーションを続けています。田舎暮らしや二拠点居住を模索する都市部の子育て世代から一定の関心を集めており、移住相談件数は近年増加傾向にあると報告されています。
大館能代空港を軸にした交流人口の拡大
大館市と能代市の市境付近に位置する大館能代空港は、近年利用率が上昇しています。現時点では羽田便を中心に一定の便数が設定されていますが、航空便数は時期や需要によって変動するため、最新情報は空港公式サイトや航空会社のウェブサイトでご確認ください。空港アクセスの改善によって、首都圏からの移住検討者や企業進出の動きが加速する可能性もあり、県北地域の産業・観光にとって重要なインフラとなっています。
秋田犬と観光ブランドの活用
「秋田犬の里」はインバウンド観光客にも高い人気を誇ります。2026年時点でも海外からの来館者数は増加傾向が続いており、市内の飲食店や宿泊施設への経済波及効果も見られます。ただし、観光客の増加が移住・定住につながるまでには時間がかかるのが課題で、「観光で来てくれても住んではくれない」という壁をどう乗り越えるかは引き続き問われています。
高校統合と教育環境の再編
生徒数の減少を受けた秋田県の高校統合の動きは、大館市にも直接影響します。教育環境が縮小すれば、子育て世代が移住を検討する際のマイナス要因になりかねません。学校の維持・充実は「住みたいと思わせるまち」の条件として、産業政策と同じくらい重要な位置を占めています。
2040年・2060年、大館市はどんなまちになるのか
人口が現在の半分以下になる未来を前に、まちの形は大きく変わらざるを得ません。住宅・道路・上下水道などのインフラを現状規模で維持することは財政的に難しくなり、空き家問題も一層深刻化する見通しです。秋田県の空き家率ランキングでも大館市は低い水準とはいえず、空き家の活用・撤去が地域の優先課題の一つになっています。
その一方で、「人口が少なくても豊かに暮らせるまち」という発想の転換も少しずつ広がっています。農山村部では二拠点居住や関係人口の獲得に力を入れる動きがあり、空き家をリノベーションして移住者を受け入れるプロジェクトが市内の一部地域で進んでいます。テレワークの普及は「東京の仕事をしながら大館に住む」というライフスタイルを現実的な選択肢に変えており、かつては考えにくかった形の定住を後押しする追い風になっています。
社人研の推計は「現状トレンドが続いた場合」のシナリオです。移住者の増加、出生率の回復、新産業の立地といったプラスの変化が積み重なれば、2040年の実態が約4万9,000人より多くなる可能性はあります。ただし、その余地を活かすには今から継続的に動き続けることが前提になります。人口ビジョンの数字を遠い話として眺めていられる時間は、大館市にはほとんど残っていません。
よくある質問
大館市の人口はいつがピークでしたか?
統計の区切り方によって異なります。合併前の旧大館市域(現在の合併後の市域より狭い範囲)でみると、鉱業・製材業が盛んだった1960年代が最多で、10万人を超えていたとされています。現在の合併後の市域でみると、2005年の旧比内町・田代町との合併直後が事実上の最大規模で、その後は一貫して減少が続いています。記事冒頭で触れている「10万人超」はあくまで旧市域ベースの数字である点にご注意ください。
2040年に約4.9万人という推計は確定した未来ですか?
社人研の推計は「過去のトレンドが続いた場合」のシナリオです。移住者の増加、出生率の回復、新産業の立地などプラスの変化が積み重なれば、実際の人口は推計より多くなります。逆に、若者の流出がさらに加速するような局面では推計を下回る可能性もあります。あくまで政策立案のベースとなる参考値として捉えることが重要です。
大館市の高齢化率は全国・秋田県内でどのくらいの水準ですか?
2025年時点の住民基本台帳ベースで65歳以上が40.6%という数字は、全国平均(約29%台)を大きく上回っています。秋田県内でも高齢化が進んだ自治体の一つですが、上小阿仁村(70%超)や藤里町など過疎の進んだ村と比べれば、一定の都市機能を持つ中規模市としての水準です。
大館能代空港はどこに位置していますか?
大館能代空港は、大館市と能代市の市境付近に立地しています。「大館市の北方」と紹介されることもありますが、厳密には両市にまたがる形の位置関係にあります。空港名に両市の名前が入っているのはこのためで、県北地域全体の玄関口として機能しています。
大館市が人口減少を食い止めるために最も重要なことは何ですか?
大館市の人口ビジョンでは「雇用の確保」と「若者の定住・UIターン促進」が核心に置かれています。具体的には、成長分野での企業誘致・創業支援、移住者向け住宅・子育て環境の整備、そして大館能代空港を活用した交流人口の拡大が主要な柱とされています。長年続く構造的な課題であるだけに、単発の施策ではなく継続的な政策の積み上げが問われています。
高齢者1人を支える生産年齢人口が少ないとはどういう意味ですか?
住民基本台帳の年齢別人口データをもとに、65歳以上の高齢者数と15〜64歳の生産年齢人口数を単純に割り算すると、大館市では高齢者1人あたりの生産年齢人口が1人台前半にとどまると試算されます(編集部試算)。全国平均では同じ計算で2人を超える水準とされており、社会保険料や税負担など現役世代への経済的な重圧が相対的に大きいことを意味します。なお、この試算は住民基本台帳の公表数値をもとにした概算であり、就業率や就労形態は考慮していません。
まとめ
大館市の人口推移を振り返ると、旧市域のピーク時に10万人を超えていたところから現在の6万3,000人台への長い下降線が続いており、社人研の推計では2060年に3万人台という水準が示されています。ただし、推計はあくまで現状トレンドの延長線上のシナリオです。移住者の受け入れ、秋田犬・きりたんぽを軸にした観光ブランド、大館能代空港を活かした産業振興など、大館市には他の過疎地にはない個性と地域資源があります。数字を直視しながら、それでも「ここで生きる」と決めた人たちが動き続けているまちです。
大館市の取り組みをさらに詳しく知りたい方は、大館市への移住支援と暮らしの実態や、県全体の人口減少の構造を深掘りした秋田県が衰退する理由とは?もあわせてご覧ください。
